高専から流体研へ 〜流体研で研究に取り組む教職員の声〜

脱炭素研究の最先端は、まず手を動かすところから

■燃焼とエネルギーの研究がしたい

専門は高圧燃焼です。現在とくに化石燃料の代わりになる燃料として注目されているアンモニアの燃焼に取り組んでいます。高専生の時から石油の代わりとなる水素などのエネルギーの話題に関心を持ち続けてきました。また自動車が好きだったことから、その力の源であるエンジンにも興味がありました。高専の卒業研究では水素の燃焼に関する数値計算をテーマにしました。大学、大学院では高圧燃焼実験に取り組み、水素の燃焼も行いました。東北大に着任以来、アンモニア燃焼に取り組んでいます。

■カーボンフリー燃料のアンモニア研究へ

  • 水素は石油に代わるエネルギーの有力候補であり、水素ステーションの整備が進むなど、徐々に身近になってきました。ガスタービン用燃料としての研究も進んでいます。ただし運搬や保存にコストがかかるという課題があります。一方アンモニアは水素より扱いやすく、火力発電にも使用できます。そのため化石燃料の使用を減らす効果的な手段として注目を集めるようになったのです。社会に役立つ研究をしたいと考えている私にとって、より社会実装に近いアンモニア燃焼は、まさに自分が取り組むべきテーマだと感じました。現在、企業などと協力して研究を進めており、アンモニアを効率よく燃やしつつ、発生する窒素酸化物を最低限に抑えられる燃焼法の開発などに成功しています。

■「まず手を動かす」研究室で社会とつながる研究を

  • 流体科学研究所は、さまざまな分野の一流の先生が集っている研究所です。お互いの距離感も近いため、協力して研究しやすい雰囲気があります。また研究室の「まず作って試してみよう」という方針も、高専生の時から自由にアイデアを試す事ができる環境にいた自分に合っていると感じます。

■自分の好きなことを大事にしてほしい

  • 研究する上で大切にしているのは、社会の役に立つということです。大学院生の時に執筆した論文に自動車メーカーから質問が来たことがあり、自分の研究が社会とつながっているのだと感動しました。一方で、自分の興味や関心も大切にしてきました。進路を決める時は、「どこに行けば自分のしたい事ができるか」を一番に考えてきました。自分の関心を軸に進んできたことが、今の充実した研究生活につながっていると感じます。高専生の皆さんには、ぜひ自分の好きなことを大切にしてほしいと思います。流体研ではエネルギー、航空宇宙、バイオ等、さまざまな研究に取り組むことができます。皆さんの興味と一致するテーマがあれば、ぜひ流体研に来てほしいですね。

【Profile】
東北大学流体科学研究所
複雑流動研究部門 高速反応流研究分野
准教授 早川 晃弘
2006年に津山工業高等専門学校を卒業。九州大学工学部に編入学し、同大学大学院工学府で博士号を取得したのち2013年より東北大学流体科学研究所の助教。1年間英国ケンブリッジ大学滞在研究員。2020年より東北大学流体科学研究所の准教授。