流動創成研究部門

生体流動ダイナミクス研究分野

  • 教授太田 信

  • 特任准教授(客員)小助川 博之

  • 助教安西 眸

生体流動ダイナミクス分野では、治療に直接役立つ新デバイスの開発と、新デバイスの性能評価法の確立を目指す研究を行っています。例えば、脳動脈瘤と言われる血管の疾患に対する治療法の一つに血管内治療(血管の中から治療していく方法)があります。この治療法で使われる医療機器を工学的にみれば、血流を制御するデバイスです。しかしながら、このデバイスの開発だけでは、患者に使えるまでに到達できません。このデバイスの性能を安全にそして客観的に評価し、誰もが使えるようにする必要があります。このような観点から、私たちの研究室では、数値流体力学解析(CFD)、機械学習や、血管モデル実験による流れ場計測(PIV、超音波)を用いて、生体内や医療機器周りの流動現象を取り扱う研究をしています。これにより、病気の原因解明や治療による血流改善効果の予測が可能になってきました。これらの研究開発を、医療現場、医療機器メーカと、設立したベンチャー企業(Blue Practice株式会社)とともに行っています。

PVA-H3Dプリンタの開発

本研究室では,医療機器の検証と手技トレーニングのため,血管と同様な力学的性質を持ったモデル(バイオモデル)の開発を行ってきました.ポリビニルアルコールハイドロゲル(PVA-H)を用いたモデルは,当該研究室で世界に先駆けて開発されました.患者固有の形状を作ることができるようになれば術前手技確認に使用できることから,PVA-H3Dプリンタの開発を行っています.写真は,開発したプリンタで作製した脳血管モデルです.

血管モデル内の流れを可視化する研究

カテーテルやステント周りの流れを見ることにより,そのステントの効果を事前に調べることができます.本研究室では開発したモデルを用いて可視化するシステムを開発し,血管内におかれたステントの血流制御効果を,実際に検証することができるようになりました.今後は血管内視鏡やその他の医療機器に応用できると考えています.

CFDによる血流解析

血流は疾患の生成や成長に深く関与していると考えられています.また治療後をシミュレーションすることで,最も効果的な治療法を,治療前に治療方針が立てられるようになると期待されています.近年は,流出口が複数ある血管形状における血流状態を理解したいといったニーズが高まっております.そこで,本研究では血流状態が測定によって分かるところを頼りにシミュレーションをする手法を開発しています.

標準脳血管座標系の開発

「病気」は「健康な状態」でないことを表すが、そもそも「健康な状態」とはどのような状態を指すのだろうか?脳血管疾患・循環器系疾患では血管形状が変化する病気があるが、どの程度まで形状が変化すれば「病気」と判断するのか? 上記の問題を考えるため、医療用脳画像から抽出した脳血管形状を基に、日本人の「平均的な脳血管構造」を構築する研究を行っています。平均形状を作り上げることで「平均値からのずれ」を計算することが可能となり、脳血管疾患の定量的診断基準や医療デバイス選定基準の策定につながることが期待されます(メガバンクと共同研究)。
  • 構築された標準脳血管座標系
  • 標準脳血管座標系と患者固有中心線の違い

ディープラーニングによる血流動態予測

血管内の流れ場を知るため、これまでは侵襲的/非侵襲的な血流計測や、コンピュータを用いた数値流体力学(CFD)解析が行われてきました。しかし、計測における詳細な流れ場を知るための解像度の不十分性や、CFD解析に要する長い計算時間が問題でした。 そこで本研究では、CFD解析に代わる方法としてディープラーニング技術を用い、医療用画像から構築した血管形状に対して流れ場を瞬時に推定する技術を開発しています。CFD解析では約10分を要していたのに対し、ディープラーニングでは約1秒で血流場を得ることができ、大幅な解析時間の短縮が可能となりました。
  • 大動脈流れの流線を可視化(左:CFDにより得られる数値解析結果、右:ディープラーニングによる予測結果)