本研究分野では、大気圧における低温プラズマの流れは、熱、光、化学種、荷電粒子、衝撃波などの生成や輸送が簡便に行えるため、これらの特徴を利用したプラズマ医療や気泡内帯電気泡の研究を進めています。また、ナノメートルスケールの水の液滴を生成し、高速で衝突させることで、わずかな水のみで濡らさずに低温で洗浄・殺菌する技術の開発を進めています。このように、プラズマの流れと生体の相互作用やナノ流動現象について明らかにし、最先端プラズマ医療技術や革新的水利用技術の基礎学理の構築ならびに社会実装をすすめ、国民の健康を守る次世代技術の創成を目指しています。
プラズマ医療の開拓:プラズマ流の刺激による生体応答の解明
最先端プラズマ医療の基礎と応用を進めています。プラズマによるがん細胞の活性化や不活性化に関する研究では、これまでは、プラズマにより生成される化学的活性種の効果が注目されていました。当研究室では、効果の強い化学種の影響を取り除いた電気的効果や紫外線による効果や化学種と電気や紫外線による相乗効果を明らかにするため、細胞応答の観察とその詳細な解析をおこなっています。
ナノ秒パルス電流によるアクチンフィラメント形成の様子
ナノ秒パルス電流刺激によりがん細胞が伸長している様子
高速ナノ液滴が拓く革新的水利用:わずかな水のみで濡らさず低温で洗浄・殺菌する技術
水蒸気を混合させた加圧空気をノズルから噴出させ、凝縮により高速のナノメートルスケールの水の液滴を生成させることで、わずかな水のみで濡らさずに洗浄・殺菌できる機能を発現することを発見しています。写真は、従来の抗菌処理(左)と高圧ガス噴射処理(中)、高速ナノ液滴処理(右)で殺菌除去したバイオフィルム産生菌の様子で、高速ナノ液滴により洗浄・殺菌できることを明らかにしました。高速ナノ液滴の特性と洗浄・殺菌メカニズムを明らかにし、実用化を進め社会実装することを目指しています。
人工血管上に形成したバイオフィルム産生黄色ブドウ球菌の抗菌処理(左)と高圧ガス噴射処理(中)、高速ナノ液滴処理(右)後のSEM画像。
(写真:東北医科薬科大学 藤村茂教授提供)
帯電キャビテーション気泡生成とダイナミクス解明ならびにその最先端応用
レーザーで誘起したキャビテーション気泡内でプラズマを発生させ、今まで計測が困難であった気泡中の圧力や特性を明らかにすることを目指しています。また、プラズマ発生による気泡内への帯電は、気泡収縮過程で大きな電気的な力や高電界を形成するため、微小高エネルギー源や新しいバイオ・医療応用などの新しい機能を活用する手法の開発に取り組んでいます。
帯電レーザー誘起キャビテーション気泡のダイナミクス。印加電圧5kV(放電あり)と印加電圧なし(放電なし)の時間経過画像。