複雑流動研究部門

先進流体機械システム研究分野

  • 教授伊賀 由佳

  • 准教授岡島 淳之介

当研究分野では、高速気液二相流、特にキャビテーションに関する複雑流動現象の解明と、それに関連する流体機械システムの高度化に関する研究を、数値シミュレーションと実験の両面から行っています。

液体ロケットターボポンプに発生するキャビテーション不安定現象の研究

液体ロケットエンジン・ターボポンプインデューサではキャビテーション不安定現象と呼ばれる振動現象が発生することがあります。これは、推進剤流量の異常振動や回転非同期の軸振動、ポンプ性能の低下を引き起こし、さらには実際に重大事故の原因となった例も報告されています。研究室では、このキャビテーション不安定現象の数値予測、抑制・制御手法の開発、発生メカニズムの解明などをスーパーコンピューティングを用いた数値解析により行っています。

キャビテーションの熱力学的抑制効果の解明

ロケットの推進剤である液体水素、液体酸素で発生するキャビテーションでは、蒸発潜熱による温度低下の影響で、その体積が抑制されることが知られていますが、実際にどの程度抑制されるかを予測することは難しいため、ロケットポンプの設計に抑制効果を有効に利用できていません。そこで本研究室では、推進剤と同程度の熱力学的抑制効果を有する高温水のキャビテーション実験におけるキャビティ内部温度の高精度計測や、独自に開発した熱的モデルを用いた極低温キャビテーションの数値解析における乱流熱伝達の評価を通じて、キャビテーションの熱力学的抑制効果の解明を試みています。
  • 高温水キャビテーションタンネル実験設備とNACA0015翼形まわりのキャビテーションの様相(140℃)

相変化を伴う気液二相流における熱輸送現象の解明とその応用

気液二相流であるキャビテーションや沸騰では、気液界面での熱移動が蒸発・凝縮に重要な役割を担い、流れ場に大きな影響を与えます。また、流体が接する固体壁面上では、固気液接触領域が形成され、材料の特性や濡れ性の違いで熱・物質の流れは変化します。このような現象が絡み合うため、沸騰現象の素過程である壁面上の単一気泡の蒸発過程は数理モデリングおよび数値シミュレーションでの再現が十分な状況ではありません。本研究室では、このような界面を通じた熱輸送現象の理解のために、動的接触線まわりの熱流動解析やそれを利用した沸騰現象の数値シミュレーション、高速流動場のサブクール沸騰実験などを行っております。さらにこれらの熱輸送機構の高度化を通じて、次世代冷却システムへの貢献を目指しております。
  • せん断流中における単一気泡の沸騰伝熱の数値シミュレーション
  • 高速流動場中の非定常サブクール沸騰