通常は直接目で観ることのできない熱・物質移動現象をレーザー光を使って“可視化”し、生体内や無重力環境といった極限環境下における熱・物質輸送現象を研究しています。光の干渉を利用した干渉法と呼ばれる技術を用いて、サブミクロン領域で起こる輸送現象を高精度に可視化できるシステムを開発しています。位相シフト技術を導入することで、信頼性の高い可視化技術を確立し、気液界面でのガス吸収過程やタンパク質の非定常拡散場、または沸騰・凝縮などの相変化現象といった熱・物質輸送現象を可視化しています。併せて、薄膜コーティングにおけるナノスケールの膜厚分布計測も、この高精度可視化システムを使ってチャレンジしています。これら光を使った技術で、複雑系物質輸送過程を定量的に評価し、さらにはそれら輸送現象を能動的に制御する技術開発を進めています。
タンパク質の物質輸送特性評価と能動輸送制御に関する研究
生体内などの複雑環境下におけるタンパク質の物質輸送現象の研究を行っています。本研究室では、独自に開発した位相シフト干渉計を用いてマイクロスケールでの濃度場を高精度計測することにより、生体内環境がタンパク質の物質輸送現象にどのような影響を及ぼすか、また微細構造を有する透過膜によってタンパク質の物質移動制御は可能かという点に着目し研究しています。フランスのINSA-Lyon及びオーストラリア国立大学との共同研究として進めています。
- マッハツェンダー型位相シフト干渉計
- 透過膜細孔の違いによる物質拡散量の違い
流れによる熱・物質輸送の評価
マイクロスケールの熱・物質輸送現象を可視化する技術と同じ原理を使って、比較的大きな熱・物質輸送現象である自然対流の乱流遷移現象や一様流中に形成される温度境界層・濃度境界層を観察し、伝熱促進・制御に向けた研究を進めています。流れの遷移を観察するため大型干渉計を製作し、温度場濃度場を高精度測定することで、移流による熱・物質伝達機構の解明を目指しています。
- 大型位相シフト干渉計 x
- 温度場可視化結果と数値計算の比較
超臨界流体中における熱・物質移動現象の可視化
超臨界流体を用いた高効率低環境負荷の汚染土壌改質手法の実現を目指し、超臨界条件下における作動流体内の特異な熱・物質移動現象とその相互作用の理解に向けた研究を行っています。本研究では独自の光干渉計や数値計算を用いて有機物の超臨界二酸化炭素中への溶解現象を評価します。本研究が提案する汚染土壌の改質・浄化技術が確立は、国連が掲げている SDGsにも大きく寄与するものになります。
- 温度差を有するキャビティ内の超臨界流体の温度場と流線
- 超臨界二酸化炭素の可視化