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2023.08.29

【プレスリリース】熱効率向上の弊害、ノッキングの謎に迫る理論構築に成功 -着火と火炎の等価性理論を構築、定量予測が可能に!?- (2023.8.29)

【発表のポイント】
・これまで別々に扱われてきた「着火」と「火炎」が等価であることを示す理論の構築に世界で初めて成功しました。
・ガソリンを含む実用燃料には、火炎として存在できない特別な条件が存在することを証明しました。
・この条件(温度・圧力)を越えるとエンジン内では自着火(ノッキング)が発生することを明らかにしました。
・ノッキング予測は世界的にも非常に困難と考えられてきましたが、この理論により予測が可能になると考えられます。

【概要】
 ノッキング現象は自動車用ガソリンエンジンの熱効率向上の阻害因子です。この現象は流体現象と化学反応の複雑な相互作用に関わるため、エンジンが実用され百年を越えた現在も、完全な理解は得られていませんでした。

 東北大学流体科学研究所の森井雄飛助教と大学院博士後期課程の角田陽氏、インド工科大学ルールキー校の Ajit Kumar Dubey(アジット・クマー・デュベイ)助教、東北大学流体科学研究所の丸田薫教授らの研究チームは、世界で初めてノッキング実験データと定量的に一致した直接数値計算結果を分析することで、極限下では燃焼化学反応が起こる火炎が、「火炎」として存在できなくなる特別な条件が存在することを突き止めました。このとき起こる現象を「火炎からの激しい遷移現象」(Explosive transition of deflagration) と名付けました。この結果から、着火と火炎の等価理論を構築、ノッキングとこの条件の関係を明らかにすることに成功しました。世界的な研究の潮流では予測は原理的に不可能とみられていたノッキングの発生を、近く予測することが可能になるとみられます。

 本研究成果は、2023年8月7日付で流体物理学の専門誌 Physics of Fluids に掲載されました。




図1. 流入温度 (Inlet temperature) と燃焼速度 (Burning velocity) の関係。ルイス数が1より低い燃料(H2)は常に火炎が存在するが、ルイス数が1より高い燃焼(n-C7H16)には臨界条件(閾値温度)が存在し、それ以上の温度では火炎構造が存在しない。


【用語説明】
注1. ノッキング
ガソリンエンジンで発生する異常燃焼。ピストンや、点火プラグから伝播した火炎による圧縮のため、未燃状態の混合気が自己着火する現象。エンジンの破壊を招くこともある。


<関連リンク>
東北大学プレスリリース
丸田・森井研究室ウェブサイト

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(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所 
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