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2023.07.19

【プレスリリース】カーボンナノチューブとセルロースナノファイバーから高強度導電性複合繊維を開発 (2023.7.19)

【発表のポイント】
・単層カーボンナノチューブ(注1)とセルロースナノファイバー(注2)の複合化に成功しました。
・交流電場と流動場を組み合わせた独自の繊維配向法を用いて、セルロース繊維に高い導電性を付与しました。
・50%という高いカーボンナノチューブの含有量でも複合繊維の高強度・高靭性化に成功しました。
・従来の水分センサーに対して約5倍の検出感度を実現し、高強度・軽量、低環境負荷というセルロースの特性を生かした超高感度水分センサーや新たなエレクトロデバイス、エレクトロニクス材料への応用が期待されます。

【概要】
 木材繊維を機械的・化学的にナノオーダーまで解きほぐすことのできるセルロースナノファイバー(CNF)は、直径数10nm程度の高結晶性の超微細繊維であり、次世代のバイオマス素材として注目を集めています。このセルロースナノファイバーを再合成することにより、セルロース本来の有する優れた材料特性を有するセルロース繊維を創製する研究が世界的に進められています。

 東北大学流体科学研究所の高奈秀匡教授は、米国ワシントン大学(ワシントン州シアトル)のAnthony B. Dichiara(アンソニー B. ディキアラ)准教授との国際共同研究により、セルロースナノファイバーに高導電性を有する単層カーボンナノチューブを混合することで,新たな導電性複合セルロース繊維の開発に成功しました。従来技術では、カーボンナノチューブ(CNT)の含有により、ナノセルロースファイバー間の結合が阻害され、複合繊維強度が低下することが課題となっておりました。本研究においては、電場と流れ場による独自の繊維配向制御法により、50%という高いカーボンナノチューブ含有量においても材料強度を低下させることなく、導電性セルロース複合繊維を創製することに成功しました。

 本成果は、2023年7月12日(現地時間)に米国化学会が発刊するACS Applied Materials & Interfacesに掲載され,本誌のSupplementary Coverに選出されました。


図1.交流電場と流れ場によりセルロースナノファイバーとカーボンナノチューブからなる微細繊維を軸方向に配向させることで,高強度導電性複合繊維を創製。


【用語説明】
注1. 単層カーボンナノチューブ
単層のグラフェン(ハニカム構造の炭素原子から成るシート状物質)から構成される継ぎ目のない円筒状物質。高い導電性を有し,軽量でありながら高強度,高熱伝導性といった優れた機械的特性を有する。

注2. TEMPO酸化セルロースナノファイバー
TEMPO (2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl radical) 触媒酸化により得られたセルロースナノファイバー。ファイバー間の高密度の電荷反発と浸透圧効果により、ナノファイバー化が可能となる。


<関連リンク>
東北大学プレスリリース
高奈研究室ウェブサイト

<問い合わせ先>
(研究に関すること)
東北大学流体科学研究所 
教授 高奈 秀匡
TEL: 022-217-5223
E-mail: takana*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所 
広報戦略室
Tel: 022-217-5873
E-mail: ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)